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【鑑賞】芸術文化を楽しむヒント

 

今日は、芸術や文化を楽しむときに生じる文脈の話です。

 

端的に言うと、目の前の作品が、どのような歴史の元で成り立っているか?を考えると楽しめます。

 

さっそく、東京国立博物館所蔵の青磁袴腰香炉に登場してもらいます。

 

中国・龍泉窯という窯で13世紀(南宋時代)につくられた逸品です。

 

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UFOのような形で、可愛さがあります。未来の建築物のようなフォルムです。実物は、見ていると溶けそうになるくらい鮮やかな緑色です。

 

キャプションには、こう書いてあります。

 

この形は中国古代の青銅器、から派生したもので、日本では「袴腰」と呼ばれています。鎌倉時代以降、仏教用具や床飾りの香炉として重宝されてきました。本作品は引き締まった姿と粉青色の釉調が美しく、龍泉窯の最盛期を裏付ける優品といえます。

 

※鬲・・・下で解説。中国古代の青銅器の一種で、”れき”と読む。

※床飾り・・・床の間の飾り。ルーツは室町時代・書院造における客室装飾。

※粉青・・・淡く落ち着きのある青色。

※釉調・・・釉薬(陶器の塗料)の色調(トーン)。

※龍泉窯・・・中国浙江省龍泉県付近にあった窯元。北宋後期が最盛期。

 

一つのキャプションでたくさん説明することがありますね。

 

では、この形はどこから来たのか?書いてある通り、鬲です。

 

鬲(れき)とは?

 

 古代中国の煮炊き用の容器の一種で、li(リー)とも呼びます。足が三本の三足器を持っています。大きいものは鼎(てい)と呼ばれます。

 

煮炊き用の容器なので、もともとは実際に使われていました。

 

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左は紀元前1000~前900年頃、右は紀元前2000~前1600年頃の鬲です。しっかり三足です。


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こちらは、紀元前13~10世紀の鬲です。青銅器なので立ち姿も安定して見えます。

 

南宋で13世紀に作った人からしても、「さすがに古いなぁ」と感じたはずです。

 

文脈とはすべて

 

芸術の面白さは、「これを作った人がどのようなバックグラウンドを持っていたか」を知りたくなるところにあります。

 

おそらく、南宋で”青磁袴腰香炉”を作った人も、美しい鬲をどこかで見て、「これを今風にアレンジしてやるぜ」と思ったのでしょう。

 

13世紀当時の"現代芸術"はもしかしたら理解の無い人たちから「こんなものは鬲じゃない!」と言われたかもしれません。「こんな脚の短いのは鬲としての品格がない」「若い者のやることはわからん」とか言われていた可能性は十分にあります。

 

 

文脈とは、大きなヒストリーの裏に、無数の小さなストーリーがあって成り立ちます

 

それを考えて見ていくところに、芸術を楽しむヒントがあります。

 

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↑美しい立ち姿です。

 

 

 

おわり